点への出向も今後増やしていく考えです。黒田 最近ではESGやSDGsのような単語を見かけることも多くなり、企業の環境面・社会面での取り組みに注目が集まっています。先ほど御社事業の核心に「環境価値」の提供があると伺いました。環境面・社会面に関する取り組みは、製品だけでなく御社事業および御社のサプライチェーンマネジメント(SCM)においても期待されています。例えば御社の顧客層の一つである自動車業界は環境面・社会面におけるSCMにも厳格です。言い換えれば御社の取り組みが優れていれば、それは顧客に提供できる価値といえます。具体的にどのような取り組みをされていますか。長坂 環境や人権への配慮をサプライチェーン全体で取り組むために、2019年11月にグローバル調達方針を策定しました。2020年度は国内の主要な調達先への周知と、遵守状況を把握するためのモニタリングをスタートします。今後、グループ各社へと広げていく考えです。当社のサプライヤーは、数が少なく、かつ当社よりも規模の大きな企業が多いこともあり、意識も高いです。基本的にSCMは、ツーウェイでなければいけないと考えており、サプライヤーの現地訪問を実施しています。海外の拠点も、サプライチェーンの中で、常にお互いにウォッチしあうことが大事です。その点では評価できる状態にあると考えています。また、事業活動においては重要課題として「事業を通じた社会課題への貢献」「地球環境との調和」「経営基盤の強化」の3つを掲げるとともに、ウェブサイト上のサステナビリティ報告を拡充して積極的に情報開示をしていきます。黒田 重点課題の中で「経営基盤の強化」を掲げられています。先ほど人材についてお話を伺いましたが、グローバルガバナンスについて具体的な方策をお聞かせください。長坂 国内であっても事業体ごとにモノゴトの進め方は異なります。まして海外では、言語・習慣の異なる企業との間で、さまざまなギャップが生じるのは当然です。さまざまな経営情報を、同じ尺度で共有し、活発にコミュニケーションできる環境を構築しなければなりません。その上で、現地に任せる部分と、本社からコントロールする部分を明確化することで、ガバナンス体制を揺るぎないものとしたいと考えています。その実現のために、経営者である私が各事業のトップとリアルに意思疎通できるフラットでコンパクトな体制を保つことが重要と考えています。当社の事業体は、精錬ライニングを含めて7つに増えました。多くの大企業では、事業部長と社長の間に担当役員がいると思いますが、私は担当役員を置かない主義です。そうすることで全事業に直接目配りし、考えを伝えられます。この体制は、売上高3,000億円規模までは十分機能しますが、今後、一層の規模拡大を目指す上では、新たな体制検討も必要かもしれません。黒田 ユニークな取り組みだと思います。そういう考え方を含め、内外に理解される情報開示が重要ですが、株主や投資家との向き合い方について工夫されている点はおありですか。長坂 社長就任以来心掛けていることは、積極的な情報開示です。当社を正しくご理解いただくために、良いことも悪いことも、適時・適切に開示することを一貫して続けています。当社の提供価値について、まだまだ世の中の理解が得られていないと痛感しています。環境設備投資等、私たちの事業の価値、本当の姿をご理解いただくための広報活動にもより力を入れています。また、IRの投資家面談には極力私自身が出るようにしています。黒田 近年の好業績を受けて、株主数が激増していますが、この点はどうお考えですか。長坂 この数年、株価も大きく変動しました。足元では、新型コロナウイルスという、目に見えない敵が全世界を揺るがせていることもあり、株価に一喜一憂するつもりはありませんが、株主の属性にかかわらず、当社経営方針・戦略をご理解いただき、長い目で見ていただける中長期志向の投資家に保有していただければありがたいと考えています。33東海カーボン アニュアルレポート 2019ビジョンと戦略事業報告資料編サステナビリティ報告サステナビリティ報告サステナビリティ報告
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