東海カーボン株式会社 アニュアルレポート 2018
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適正規模で実効性のある取締役会運営――取締役会の実効性について、どのように評価していますか。熊倉 まだ不十分な点はあるものの、全体的にはうまくいっていると思います。取締役会は社外取締役2名を含む8名体制で、活発な意見が交わされ、実効性のある議事運営がなされています。その大きな要因は事業規模がコンパクトであることです。取締役会が適正規模で運営でき、事業の全体像や動きを把握できる。また、事業戦略の立案や実施評価についても、取締役会メンバーが十分な意思疎通のもとに判断できるといえます。神林 議論の進め方も、合理性や透明性、公平性がきちんと担保されています。また、企業にとって最も大事なのは不正をしないこと、隠蔽しないことです。その点、当社ではこれまで大きな問題は起きていません。すなわち、ガバナンスが効いていることの証といえます。当社の基本理念である「信頼の絆」という言葉は、100年の歴史あっての言葉だと感心しています。――お二方は指名委員会メンバーでもあります。後継選任についてはどのような印象ですか。熊倉 一般に、社外取締役が後継者選びにかかわる際、どのように意見をいうか難しいですね。後継候補が社内から上がってくる場合、我々社外の人間にとっては、その人物の判断材料が少ないわけです。この問題について、当社では、社長自ら音頭をとって、社外取締役と候補者が交流する機会をつくってくださっています。神林 それに、各地の工場や現場を訪問する機会もあるので、工場長や現場の責任者と時間をとって話ができ、その人となりや考え方をしっかりと知ることができます。候補者の名前を聞けば、「ああ、あの人」とわかるくらいになっています。それも、コンパクトな組織ゆえのメリットですね。拡大した業容に見合う連結ガバナンス体制の構築を――急激な業容の拡大やM&Aによるガバナンスへの影響についてはいかがでしょう。熊倉 急激に成長しているといっても、まだ巨大企業のようなレベルではありません。当社の利点であるコンパクトさが損なわれる心配は少ないでしょう。M&Aについては、当社は現地の産業と誠実に付き合ってきたおかげで、当社の祖業である炭素分野の優良な企業と統合できたという側面があり、全体として良い方向に進んでいると感じます。神林 実際、M&Aの効果がすぐに見えてきましたね。例えばTCCB社については、タイの当社既存工場と米国・テキサスの同社工場の交流が始まっており、さっそく相乗効果が出てきています。事業規模の拡大は、技術革新のシナジーをはじめ、生産性、コスト、材料調達等の面で、当社の大きな強みになると思います。――最後に、今後のガバナンスの方向性等について、考えをお聞かせください。神林 目下の課題としては、企業全体での営業力強化と市場分析が必要と感じており、そのように助言しました。社長を中心に検討していただき、施策の一環として営業企画部門が設立されました。また、中長期の課題としては、グローバル化にどう対応するかだと思います。例えば、現状売上の70%が海外ですが、その70%を代表する人が取締役会に入っていません。グローバルなガバナンス体制の構築は、早急に対応すべき重要課題です。熊倉 そうですね。今後、特に問題になるのはコーポレート部門です。国・地域によって文化も法律も違いますから、経理や労務、人材管理等、一体感のあるガバナンス体制をいかに構築していくか。中期経営計画でも重点に置いたように、連結ガバナンスの視点でどう体制を強化するかが新たな課題です。神林 当社は「小さな政府」を目指してきましたが、それでは収まらない部分が出てきています。今後は、コンパクトさの良い部分は残しつつ、徐々に適正なかたちで大きくする必要があります。より慎重な舵取りが求められると認識しています。神林 伸光株式会社川崎造船代表取締役社長、川崎重工業株式会社常務取締役等を歴任。製造業のグローバル展開における豊富な経験と知見を有する。2016年から当社社外取締役。41東海カーボン アニュアルレポート 2018ビジョンと戦略事業報告財務報告資料編サステナビリティ報告

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