東海カーボン(株)社外取締役神林 伸光(写真右)東海カーボン(株)社外取締役熊倉 禎男(写真左)※ SGL GE社はTOKAI CARBON GE LLCに、SRC社はTokai Carbon CB Ltd.(略称: TCCB)にそれぞれ商号変更対談:社外取締役から見た東海カーボン業容拡大およびM&Aによるグローバル化を見据えたガバナンス体制の構築を。客観的な視点を持って経営判断に踏み込む――社外取締役の役割について考えをお聞かせください。熊倉 社外取締役としていかに貢献するかは人それぞれ考え方があると思いますが、私は法律の専門家としてだけでなく、事業の健全な成長のために多様な視点を提供するゼネラリストという立ち位置で取り組んでいます。神林 私は以前には川崎造船と川崎重工で執行側の代表として、社外取締役を迎える立場にありました。当時は経営のアクセルを強く踏みがちだったので、社外から客観的な意見をいただけるのはありがたいと感じますね。その経験が今に活きています。熊倉 多様な視点を提供することは、社外取締役の重要な役割の一つです。単に弁護士としてのアドバイスだと、誰もが 似たようなことを言うせいか、厳しい指摘でも担当者が飲み込んでしまって経営層まで伝わらないこともあるんです。神林 そうですね。特に法律の専門的なこと等は、回答をいただいた時点で「ありがとうございました」で一件落着になりがちです。ところが、熊倉先生のように社外取締役としてかかわると、「経営をどうするか?」というところまで踏み込まざるを得ないので、大変ですよね(笑)。――ガバナンスや事業戦略に関しては、どのようなスタンスで関与されていますか。熊倉 当社はこの2年間で業績が急拡大しており、北米で黒鉛電極メーカー・SGL GE社※、カーボンブラックメーカー・SRC社※という大きなM&Aも行っています。こうした大きな変化の中では、経営判断のための客観情報、いわゆる“除菌”されていない情報をすべて共有することが不可欠です。また、社外取締役が率直な意見を述べることが認められる環境があることも大事ですね。その点、当社の執行側は真摯に対応してくれますし、我々社外取締役と積極的に意見交換した上で、「これなら行ける」というところまで詰めてくれます。神林 取締役会で適切な意見を述べるためには、こちらも能動的に要求すべきですね。執行部隊がどれだけ情報を集めてきても、リスクや最悪の状況に関する見極め、最終判断は難しいものです。例えば「米国の厳しい環境規制政策に対して、その対策で済むのか?」とか、「中国の環境規制が大きく変わって追い風が吹いたが、急に風がやんだときのことは考えているのか?」等、耳に痛いことも問題提起し、しっかりした覚悟と周到な用意をして、起こり得る問題点をつぶしきることが大切だと考えています。そのように多様な視点を保つという意味で、社外取締役というのは使いようだな、と痛感しています。熊倉 同意見です。社外取締役が「飾り」では意味がありませんからね。社外取締役として「自分は何ができるのか、何をすべきなのか」を意識するよう心がけています。毎回、取締役会での発言についても、特に厳しいことを言わねばならない場合等、常に責任を取る覚悟で臨んでいます。コーポレートガバナンス熊倉 禎男弁護士・弁理士。中村合同特許法律事務所パートナー。知財・独占禁止法・国際取引法を中心とした企業法務の専門家。2007年から当社社外取締役(途中3年間離任)。40東海カーボン アニュアルレポート 2018
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